こちらスネーク、全く意味のない板に潜入した
『METALGEAR SOLID  BEN THE OF TOILET』 簡易まとめページ



69 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:10:37 ID:qM+UgLRX
――西暦200X年、日本国某所。

大手衛生陶器製造会社の策略によって、水洗式便所の普及率が急上昇し、
日本国内の汲み取り式便所は水洗式便所へと変貌を遂げていった。
時代と共にトイレの水も流れ、人々はしだいに汲み取り式便所の利点を忘れていき、
誰もが水洗式便所に頼っていた。

しかしある日、政府の人間御用達の建物内の便所が使えなくなるという事態が発生。
原因究明を急ぐものの、それを嘲笑うかのように便所という便所の機能が停止。
瞬く間に建物中の便所が使用不可能な状態に陥った。

調査の結果、何者かの手によって人工的にトイレットシステムが止められたことが判明。
便所とはいえ、政府の人間が出入りする建物。そのセキュリティーシステムを潜り抜け、
これほどのダメージを与えられたことを知った政府上層部は、事を重大に受け止めた。

そして表ざたになることを恐れ、極秘裏にこの事件を解決することを決定する。


その任務に借り出された男の名は―――「ソリッド・スネーク」



70 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:12:47 ID:qM+UgLRX
何もする事もなくただ煙草をふかし、テレビを見ていた。
時折カロリーメイトを口にする。やはりチョコ味が一番美味いと思う。


しかし最近は、テレビをつければ暗いニュースばかりでうんざりする。
もうちょっとこう、刺激的な明るいニュースが欲しいものだ。

だがそれは表面上の話であって、本当は暇なだけ。
暇だから刺激が欲しかっただけだ。もうホント、
する事と言ったら息ぐらいのもんだった。それぐらい暇だった。

気が付いたら、ぼんやりしながら受話器を握り、大佐のところへ電話をかけていた。
そして大佐の声で急に現実に引き戻ってきた。

「スネーク、ちょうどよかった。今君のところへ
連絡を入れようと思っていたんだ。今から潜入任務へ行ってくれないか?」

「あぁ……潜入任務……なんだって?」

こんな「ちょっとコンビにでも行ってきてくれないか?」みたいなノリで
潜入任務に行かされるとは思ってなかった。


71 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:14:08 ID:qM+UgLRX

「……ここが、今回の仕事場ってわけか」


結局あの電話の後、ろくな説明も受けずに日本へのチケットの手配をされて
大佐に流されるまま飛んできた。空港からここまでの移動手段が徒歩だったのは
予想外だったが、いいウォーミングアップになったんじゃないかと思う。足が棒のようだ。

「流石に政治家が出入りする建物なだけある。それなりに大きいな……」

いつもは基地やタンカーなどと、呼ばれればすぐに駆けつけ
潜入工作をしていたものだが、今回はただの会館だ。
なんかもう俺の出る幕じゃないような気がする。

だが、スニーキングミッションは嫌いじゃない。
興味本位で民間人をスニーキングしたこともあった。
「興味本位じゃすまない、良識を持ちなよ」とオタコンに怒られたがな。


72 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:15:48 ID:qM+UgLRX
まぁ、そんなことはどうでもいい。とりあえず建物に侵入することにする。

「……はーじめーのいーっぽ!」

日本の少年達はこんな感じで物事の第一歩を踏みしめるそうだ。
オタコンに聞いた。中々しゃれたリズムの良い掛け声じゃないか。

「ん?これは……妙に静かだな……」

まるでシーンという擬音が聞こえてきそうなほど静かだ。
人っ子一人見当たらないが、なんとなく戦士の感で人がいる気配を感じ取る。

とりあえず恒例の「潜入成功報告通信」でもしておくか。


73 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:16:51 ID:qM+UgLRX
  PLLLL♪    PLLLL♪

[こちらスネーク、シショケーツーホールに潜入した。妙に殺風景だな…]

[よくやったスネーク。会館の中が静かなのは、職員に避難をしてもらっているからだ]

[避難?]

[うむ。敵は数あるセキュリティーシステムをものともせずに、
トイレ全てを使用不可にするほどの潜入のプロフェッショナルゆえ、何をしてくるかわからん。
一応一部の職員達には避難をしてもらっている。今その建物内には、数名の職員と君しかおらん]

[なるほど……ってことは、いつもよりは敵に遭遇する可能性は低いということだな?]

[だが油断するな。いつどこから攻めてくるかもわからん。いつも通りのスニーキングミッションだ]

[あぁ]


74 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:18:35 ID:qM+UgLRX
[では、念のため今回のミッションの内容をもう一度言っておくぞ。
君の任務内容は、シショケーツーホール内のトイレの修理、及び故障の原因究明。
また、このトイレの件はテロ組織の存在アピールなのかもしれん。
テロリストが潜伏している可能性も十分ありえる。注意しろ]

[………]

[どうしたスネーク]

[大佐、百歩譲って故障の原因究明は納得するとしよう。
だがな、トイレの修理なんて民間企業に任せれば……]

[そう言うな。私の友人からの頼みなんだ。こんな失態、外には漏らせないそうだ]

[友人?……大佐、俺以外に友達がいたのか……!?]

[……スネーク、君は私をなんだと思ってるんだ…]


75 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:19:40 ID:qM+UgLRX
[……オホン。その友人というのは、日本の政治家で、その建物を建てさせた本人だ。
“御手洗 丹剛(みたらし だんごう)”という男でな。今や国際的に支持がある政治家だ]

[御手洗丹剛か……聞いたことがある。
世界各国全ての国と仲良く手を取り合おうとしている政治家らしいな]

[その通り。そして、『国の違いという心の壁を取り去る』というコンセプトで建てられたのが
そのシショケーツーホールだ。世界中のありとあらゆる政治家が出入りし、
世界各国様々な人種がそこで働いている。まさに差別社会から遺脱した建物だ。
そんな世界規模の建物のトイレを破壊されただなんて、
公表できないだろう?だから君に任務を頼んだというわけだ]

[なるほどな……だが、建物の大きさとしては少し大きい市民会館レベルだな]

[御手洗の政治指針は『“もったいない”は世界に通ずる』だ。
元は市民会館だったものを改装し、今のホールを作り上げたらしい]

[けちんぼうというやつか]

[節約家と言うんだ、節約家と]


76 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:21:23 ID:qM+UgLRX
[よし、任務内容はわかった。要するにトイレの修理と故障の原因究明だな?]

[その通りだ。では、検討を祈るぞ。武装はいつもの現地調達だ]

[あぁ了解……]  シュイィィン


「ふぅー……まぁ、ぼちぼちやるかぁ」

今回はそんな24時間以内とか期限もないし、ゆったりまったり
ラジオでも聞きながらやろう。

ん?緊張感のないスニーキングはスニーキングというんだろうか?
どうでもいいか。まずはその故障したトイレとやらに行って故障具合を……

んん?あれ?ちょっと待て……武装は現地調達…?


77 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:22:54 ID:qM+UgLRX
  PLLLL♪    PLLLL♪

[こちらスネーク!おい大佐ァ!!]

[大きな声を出すな。潜伏してるかもしれない敵に見つかったらどうする]

[いや、大佐!修理道具はどうする!?]

[武装は現地調達と言っただろう?]

[ここは普通の建物だぞ?廊下やなんかに修理道具が落っこちてるわけが……]

[健闘を祈る]

[俺は神様なんかじゃない!祈られてどうにもなら]  シュイィィン


「……クソッ!通信を断ち切りやがった…」

大佐は親友だが……時々無茶を言うところが嫌いだ……


78 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:25:10 ID:qM+UgLRX
「……あぁもう、なんだよもー!着信拒否してんじゃん氏ね!
マジムカツクー!っつーかー、マジウザくね?」

あれから五分。まだ俺は入り口で大佐に連続コールをしていた。
着信拒否とか、本当にありえない。もしものことがあったらどうするんだ。


何十回目のコールだったろうか。俺は気づいた。

「はっ…!?確か俺の行動は全て向こうに筒抜けなはずだ」

ならば、やることはたった一つだ。

「大佐!見ているな!?今あんたは今までの俺の行動を見て
腹を抱えて笑っているだろう……だがな、俺はまだコールし続けるぞ!大佐が出るまで!!」

体内無線なので、はたから見れば玄関に突っ立って片耳押さえてブツブツやってる危ないやつだが、
俺は今きちんと戦っている。己自身、そして見えない大佐と戦っているんだ……!

  PLLLL♪    PLLLL♪

「むっ!なんだ!?大佐め、度重なる連続コールにいい加減根を上げたか!」

ハハハハハざまぁみろ!と思いながら通信に応えた。


79 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:25:51 ID:qM+UgLRX
[こちらスネーク。大佐、今なら素直に謝れば許してやる]

[いやスネーク……僕だよ。僕]

[なに?……あぁ、これが日本で流行っているボクボク詐欺というやつか?
なんてこった、通信機の周波数まで知られているのか。どこで情報が漏洩したんだ]

[いや違う違う。忘れたの?オタコンだよ!]

[え……あぁ、なんだオタコンか……]

[なんだよその僕と解かったやいなや、心底落ち込んだっていうような反応は]

ションボリした大佐、略してションボリし大佐からかと思ったら、オタコンからだった。


80 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:27:24 ID:qM+UgLRX
[で?なんだ?用件は?早くしろ。五秒以内に五文字以内で]

[えぇっ!?ちょ、ちょっと!なんでそんな厳しいんだよ!]

[アウト。五文字以上喋った。さよならだ]

[冗談だろ!?スネーク!スネェェェク!!]

[うるさい!大声で叫ぶんじゃない!!]

[うわっ、ご、ごめん?]


[………]

[………?]


[ふぅ、で?どうしたんだオタコン]

[え?あ…あれ?]

……大佐に対するストレスがこれで発散できた。


81 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:28:34 ID:qM+UgLRX
[あぁ、いやね、なんか武装で困ってるみたいだからアドバイスしようと思って]

[そうか、それはありがたい。大佐に無視されてもの凄い困っていたところだ]

[う、うん…友達なんだから仲良くね……]

[心配するな。大体平均して週一でこんな気まずい喧嘩状態になる]

[そうなの?割と頻繁じゃないか……]

[だがそのうち自然に仲直りする。不思議だな、人間の心ってのは]

[そんなことで人間の心の不思議を再認識されても困るよ。
あ、そうだ。とりあえず武装なんだけどさ]

[どうすればいい]


82 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:29:57 ID:qM+UgLRX
[うん、ていうか、潜入任務って言ってもそこにいるのは
そこの職員さん達なんだから、言えば貸してもらえるでしょ?たぶん]

[え……あ、事務室あたりで言えば貸してくれるか?]

[そうだね。流石にそのシショーケーツーホールにも話は通してあるだろうし、
『すいません、潜入工作員の者ですけど、トイレ直すんで工具貸してもらえません?』
とでも言えば貸してもらえるんじゃないかな?]

[なるほど。早速実行してみる]  シュイィィン

そうだったな……この会館の中は数名の職員達もいたんだったな。
初めから素直に借りに行けばよかったのか。大佐なんかにコール必要なかった。

オタコンの指示通り、事務室に行ってみることにした。


83 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:41:01 ID:qM+UgLRX
途中、何人かとすれ違いざまに挨拶を交わしながら
順調に事務室へと向かう。それなりに広いのでちょっと迷ったが、
近くにいた掃除のおばさんに訊いたら親切に教えてくれたので割と早く問題解決。

……もう、これはスニーキングでもなんでもないな。
ただ単に「トイレを修理しに来た業者の人」だな。

建物内案内図を見たりしながら、とうとう事務室へ到着した。
事務室の中を覗くと、大佐と同じくらいの年の人柄のよさそうな老人が座っている。
オホン、と咳払いをしてからノックを二、三回し、ドアを開けた。

「あの、すいませんスネークなんですけど」

「あ…あー、はいはいスネークさんね。トイレ修理の」

「え?あ、まぁ、そうです」

この手の老人は間違いを訂正をするのもめんどくさくなりそうなので、スルーしておいた。


84 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:42:10 ID:qM+UgLRX
「で、修理屋さんが何の用で?」

「修理のためのですね、工具を貸してもらおうと思いまして」

「ありゃま、修理屋さんが道具を借りるのかい?」

「いやはや、お恥ずかしい話、工具を忘れてきてしまって」

「アッハッハ、若いのにもう物忘れかい?ワシも最近ひどくてなぁ」

ニコニコと笑みを浮かべながら話しかけてくる。それにつられて会話も弾む。
たぶん、孫とかに甘い老人だ。笑顔でわかる。ついついしばらく話し込んでしまった。


85 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:45:19 ID:qM+UgLRX
「ほんじゃ、物置部屋に工具セットがあったと思うから」

「はい、わかりました」

「これがその物置部屋の鍵ね。物置部屋って名前の通り、
その部屋には色んなものが置いたり重ねたりしてあるから、崩さないようにしておくれよ。
部屋の中のものは何を使ってもいいからね。頑張んなさい」

「あ、どーもありがとうございます」

結局あの後話し込んでしまって、お煎餅を一枚頂いていろんな話を聞いた。
この建物内トイレの位置や、お孫さんが初めて歩いたときの話、最近の若者の話などなど。


「じゃ、後で鍵返しに来ますんでー」

「あーい、行ってらっしゃい」

キィィ、バタンとドアを閉め、鍵を物置部屋の鍵をグッと握り締めた。
ああいう性格を大佐にも見習って欲しい。いや、ホント。

  PLLLL♪    PLLLL♪

「ん……?大佐からか?」


86 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:46:09 ID:qM+UgLRX
[キーを手に入れたようだな。早く工具を取りに行き、トイレの修復作業に移るんだ]

[……大佐]

[なんだ?]

[俺、がんばるよ]

[…? がんばればいいじゃないか]

[………]

[………?]  シュイィィン


「なんか……なんか違うんだよ…俺の求めているものと……」


87 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:47:05 ID:qM+UgLRX
なんとも言えぬ虚無感のようなものに駆られながら、
工具を取りに物置部屋へ向かった。

歩くこと数分。東にある物置部屋についた。

「ここだな……物置部屋。えっと…鍵、鍵……
んん?鍵穴に鍵が入らん……あぁ、なんだ上下逆か…」

鍵を開け、暗い部屋の壁を探って電気を点ける。

「うおっまぶしっ……おぉ、これは……」

本当に名前の通り、嘘偽りのない物置部屋だった。
雑然と物が積んであり、廃墟にあった物を適当にこの部屋にぶち込みました
みたいな感じになっている。


「これはこれは……この物の山から工具を探せというのか…」

ゴミ同然の物の中から工具を探し出すなんて、考えただけでいやになる。
いつものミッションとは違うハードさだ。


88 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:48:29 ID:qM+UgLRX
「はぁ……どうにかならんかな」

ガラクタの山の前で、ただただ立ち尽くして溜息をつくばかりだった。
もう、どこから手をつけていいのかわからない。
こうなると、テレビ番組の特集でゴミ屋敷を片付ける人は凄いと思う。

「……あいや、なんだあれは」

部屋の隅を見ると、古ぼけた事務用ロッカーが置いてあった。
書類とか小物を入れておけるタイプのやつだ。

「この展開で、このロッカー……ということは、だ」

淡い期待を抱きながら、ロッカーの引き出しを一つ一つ開けていく。
アレ?二段目が開かない。鍵がかかっているのか。まぁいい。
途中でやたらスパナばかり入っている引き出しがあったので、一応全部とっておく。


89 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:50:47 ID:qM+UgLRX
そして、上から四段目の引き出しを開けたときだった。

「! 見つけた!見つけたぞ……!」

ついに工具を発見した。しかも、様々な工具が揃っている「工具セット」だ。
電気ドリルとかもあるし、普通のドライバーも入ってる。これは良い物を手に入れた。

「よし!これはついているぞ!」

予想していたより大分早く、要領よくトイレ修理に使えそうな
工具を手に入れることが出来た。しかもスパナも大量ゲットしたしな。これでOKだろう。

  PLLLL♪    PLLLL♪

「お、何だ?また大佐からか?」


90 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:51:37 ID:qM+UgLRX
[スネーク、工具を発見したようだね]

[おぉ、オタコンか。しかもご丁寧に工具セットだからな。これで大抵のものは直せる]

[流石にハンマーは使わないだろうけどね]

[いやわからんぞ。赤い帽子の配管工はハンマー使いだ……お?]

[どうしたんだい?]

無線通信をしながら雑然と積み上げられたガラクタの少し上方を見ると、
もうサブキャラ扱いから脱線している、影の主役が見えた。


91 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:52:52 ID:qM+UgLRX
[……スネーク?]

[……ダンボールだ……]

[え?]

[ダンボールを発見した!よし!早速捕捉しにかかる!]

こんな所でダンボールが発見できるとは思っていなかったので、
思わず鼻息が荒くなる。

[ま、待ちなよスネーク!そんなガラクタの山の途中にある
ダンボールを引き抜いたら、崩れてきて……]

[男は度胸!何でもためしてみるものさ]

頭の上くらいの高さにある、折りたたまれたダンボールに手を伸ばす。
しかし、ガラクタがなだれて来るのは怖いので、
一応ゆっくり慎重にダンボールを引き抜いてみる。
だが、いくら引っ張ってもビクともしない。


92 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:53:59 ID:qM+UgLRX
[なんだこいつは……全然引き抜けない]

[無理に引っ張らず諦めたら?]

[こうなったら、強行突破だ]

ガラクタの山から申し訳なさそうにはみ出ている
ダンボールの端をグッとつかみ、深呼吸をした。

[ス、スネーク!?まさか一気に引っ張り出すつもりかい!?]

[テーブルクロス引きの要領で一気に行けば大丈夫だ!]

「つぇあっ!」という掛け声でいっぺんにダンボールを引き抜いた。
ズザザッという音とともに、ちょうど良い感じの大きさの
ダンボールを引き抜くことに成功した。


93 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:55:05 ID:qM+UgLRX
[どうだオタコン、無事ダンボールを手に入れたぞ]

[全く、そのダンボールへの情熱はどこから沸いて来るんだよ……]

呆れ気味のオタコンをよそに、早速ダンボールの着用を試みる。

「む、大きすぎず小さすぎず……実にベストな大きさだ……」

完全に悦に入っていると、後ろでガタタッと音がした。

「!?  なんだ!?」


音に反応してとっさに振り向くと同時に、ガラクタの山が雪崩れてきたのがわかった。

「くそぉっ!」

急いでその場から回避をしてみたが――数秒出遅れた。ダンボール被ってたから。


94 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:57:46 ID:qM+UgLRX
「ぐぐ……いたた…」

ラッキーなことに、重みのあるものは体にぶつからなかった。
しかしこの量が積まれていたとは……これを積んだやつは
相当バランス感覚が養われているな。

[ス、スネーク!大丈夫かい!?]

この衝撃でもオタコンとの通信状態は継続されたままだったようだ。

[あぁ、ダンボールがなければ即死だった……]

[いや、ダンボールがなければすぐに逃げられたと思うけど……]

ガラクタの山を掻き分け、体についたほこりを掃った。
……それにしても酷いほこりだ。我が家より汚いんじゃないか?


95 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 17:59:16 ID:qM+UgLRX
[酷い目にあったねスネーク。でも、工具は
手に入れたんだし早くトイレを直しに行かないと!]

[そうだな……]

崩れてきたガラクタに足をとられながらも出口へ向かうと、
先ほど工具セットを発見した業務用ロッカーがガラクタに押しつぶされて壊れていた。

「やっかいなことになったな……」

事務室の老人に怒られるかもしれない、と考えたが、
あの優しそうな老人だ。きっと笑って許してくれるに違いない。

……と、そこで俺は壊れたロッカーの引き出しから白い紙が見えているのに気づいた。
さっき鍵が掛かっていて開かなかった引き出しだ。

「……なにが書いてあるんだろうな」

好奇心に負けて、ロッカーに近付き紙を手にとってみた。


96 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 18:00:24 ID:qM+UgLRX
「これは……便器…か?」

どこからどうみても便器。色々書き込まれているところをみると、
新型便器の設計図ってところだろうな。妙な言語で書かれている。暗号か?

[どうしたんだいスネーク?]

[いや、なにやら便器の設計図を発見した]

[便器?……本当だ、こりゃ便器だ]

[しかし暗号で書かれているんだ。何が書いてあるかわからない]

[近頃は便器業界も厳しいんじゃないの?情報漏えいを恐れて暗号にしてるのかも]

[なるほど]  シュイィィン

宝の隠し場所でも記した地図かと思って近付いてみたものの、
ただの便器設計図だったとは。ガックリだ。


97 名前:名無しだって洗ってほしい 投稿日:2007/02/24(土) 18:01:19 ID:qM+UgLRX
「まぁいい。工具は手に入ったし、トイレの修理しにいくか」

ふわぁーあとあくびを一回して、物置部屋から出た。
ガラクタが崩れたままだが、元に戻すのも面倒くさいから別にいいだろう。

この建物内のトイレの位置は、事務室の老人の話しで既に確認済みだ。
東と西にトイレが一箇所ずつ。便器の数は男女合わせて八個。
そして四階建てなので、トイレの箇所数は全部で八箇所、便器数は六十四個。

……あれ、ちょっと待て。六十四個の便器を直すのか?
俺一人で?六十四個を?一人で?


「……こりゃ当初の予想以上にハードになりそうだ…」

ミッション終了後、二、三日外に出られなくなるかもしれない。
体に便所の匂いが染み付きそうだしな……。





104 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:02:58 ID:ITTOow3a
――Mission Log――

シショケーツーホールに無事潜入したスネークは
トイレ修理用の工具がないことに気づき、事務室で
工具セットが置いてる部屋、“物置部屋”の鍵を借りることに成功。
早速物置部屋に向かったスネークを待ち構えていたのは
雑然と積み上げられたガラクタ達。近くのロッカーから工具セットと
大量のスパナをゲットし、ガラクタの山からダンボールも入手した。
ダンボールを入手した際ガラクタが崩れてロッカーを破壊する
というミスを犯したが、とくに気にすることもなく進むことにした。

必要な物を全て調達したスネークは、
最短距離にある一階東側男子トイレを目指す。

【EXIT】


105 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:04:21 ID:ITTOow3a
「それじゃあまず、最短距離にある一階東側男子トイレへ行くか……」

あんまり乗り気がしないまま、とぼとぼ歩き始める。

しばらく歩くと、なにやらほんわかとした良い匂いがしてきた。
なんだこれは?便所の匂いじゃあるまいし、美味しそうな……パンか?

思わず足を止め、鼻をヒクヒクさせて匂いを嗅ぐ。
まるで匂いに反応するかのように、腹がググゥと鳴った。

「そういえば……腹が減ったなぁ……」

嗅覚を通常の三倍まで上げ(ているつもりで)、
犬のように匂いを辿りながら歩いた。

「あわよくばつまみ喰い、あわよくばつまみ喰い、あわよくばつまみ喰」


  PLLLL♪    PLLLL♪

慎重に歩いていただけあり、一瞬体がビクッとし、慌てて通信に応答した。

[スネーク、やめんかみっともない]

また大佐のお小言か。


106 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:05:41 ID:ITTOow3a
[だが大佐、腹が減っては戦が出来ぬと言うだろう?]

[日本に飛ぶ途中の飛行機で、機内食を食しただろう]

[腹が痛くて食べられなかった。カロリーメイトをかじっていたのに
急な召還命令で、途中まで走って空港まで向かったからな。
何か食べた後に走ると横っ腹痛くなるだろう]

[………]

[それに大佐、必要なものは全て現地調達だろ?なら食料も現地調達だろう。
盗み食い……もといつまみ食いの何が悪い!]

[どっちも大して変わらんが……まぁ、仕方ない]

[わかってくれたか。それではまた食料の捜索に戻る]  シュイィィン

大佐のお許しも出たことだし、全力でパンらしき匂いの元を辿ろう。
お許しが出なくてもやるつもりだったがな。


107 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:08:02 ID:ITTOow3a
「クンクン……こっちか……こっちだな……」

視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚、五感のうち嗅覚以外の感覚を
犠牲にしてでも、嗅覚の感度を最大限にしてパンの匂いの出所を掴もうとする。

そしてしばらく歩くと、「食料庫・調理場」と書かれたドアに辿り付いた。


「この扉の向こうに食料が…生唾がでる……」

もう腹の虫も限界なようで、グゥグゥではなくゴルンゴルンと鳴り始めた。
フフフ、アイムスネークイーター。……これじゃ『私は蛇を食べます』か。

……いや、食う!今の俺だったら毒蛇でもムシャムシャと食う!


腹の空きすぎで思考能力が低下してきた。早く何か食わなければ。


108 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:09:15 ID:ITTOow3a
「さぁ、この扉の向こうには楽園が広がっているはず……
食べ放題という名の楽園がな……!」

気持ちを一度落ち着けるために目をつぶって深呼吸し、
楽園へのドアをバン!と勢いよく開けた。
すぐさま溢れんばかりのパンの匂いが鼻を通り抜ける。

目をかっ開いて部屋の中を見渡すと、そこには――。


「……なんにも…ない……?」

人は一人もいないのだが、
調理台が沢山並び、隅にコンロがいくつかある。
あと巨大な冷蔵庫と棚のようなもの、食器……。

パンの匂いはするものの、パン本体がどこにも見当たらない。


109 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:10:33 ID:ITTOow3a
「こ……これは一体どういうことだ……」

急いで冷蔵庫や棚の中を探すが、パンどころか何の食料もない。

「く…くそ!食料もないのに何が食料庫だ!」

ないとわかってしまうとさらに腹は減る。
いろんな意味で腹の虫が収まらない。
腹を突き破って腹の虫とやらが飛び出してきそうだ。

くまなく部屋の中を見渡してみると、コンロ台の下に収納スペースがあった。

「……そこか!そこだな!」

「いやいやそれはないだろ」という気持ちで、なかったときのショックを
軽減させる保険をかけつつ、一欠けらの希望を抱き収納スペースを開けた。


「……小麦粉しかねえええええぇぇぇ!!」

魂の叫びが、虚しく部屋に響いただけだった。


110 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:12:28 ID:ITTOow3a
収納スペースの中には、どっさりと小麦粉の袋が置いてあるだけだった。
パンの匂いが漂うのは、普段ここでパンが作られていて、
パンの匂いが部屋中に染み付いてしまっているからかもしれない。

空腹も癒せぬまま、このままやるせない気持ちでトイレ修理作業に移らなければならないのか。


「……いや、まて。こんな危機的状況、これまでにも何度も体験してきたじゃないか」


そうだ。俺はこれ以上危機的な状況でも、知恵を絞って切り抜けてきた。
不可能を可能にする男、そんな風に呼ばれたこともあったじゃないか。

逆に考えろ、小麦粉しかない。パンはない。腹は減っている。

次の瞬間頭の上に電球が浮かび上がり、明かりがともった。

思いついた次の瞬間、俺はもう行動に移していた。


111 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:13:43 ID:ITTOow3a
  PLLLL♪    PLLLL♪

[大佐!小麦粉を使った料理を知らないか?]

[小麦粉を使った料理だと?]

[そう、逆転の発想だ。パンがなければお菓子、
お菓子がなければ小麦粉を食べればいいじゃない。ということだ]

[……スネーク、そんなに我慢出来ないほど空腹なのか?]

[お腹と背中がくっつきそうだ]

[……私は小麦粉料理は知らん]

[何?じゃあいつものようにその道のスペシャリストはその場にいないのか?]

[小麦粉料理のスペシャリストなんて呼んでおらん]


112 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:15:00 ID:ITTOow3a
[ならば大佐、日本の平野レミというクッキングマスターに連絡をしてくれ。
あの人は俺が唯一信用できるメニューを考案してくれる人だ]

[……あ、スネーク、すまないがキャッチが入ってしまった。切るぞ]

[キャッチて!大佐、逃げるな!これは電話じゃないだろ!]  シュイィィン


気のせいかもしれないが、最近大佐が俺に対して白状な気がする。

……気のせいじゃないな……確かなことだ。


113 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:16:20 ID:ITTOow3a
「さて……小麦粉料理が出来ないとなるとどうするか」

大佐なら自炊とか得意そうな顔をしてるし
何かしら教えてもらえると思ったが、少し買い被りすぎていたようだ。

それならオタコンにでも訊くか?
……いや、やつはきっと料理なんて出来ない。
めんどくさがって三食コンビニ弁当とかで済ましてそうだ。


空腹でそろそろ視界がぼんやりしてきたところで、
調理台の上になにか置いてあることに気が付いた。

「……調味料か」

砂糖、塩、酢、醤油、味噌。料理のさしすせそが揃ってる。
あとは一味唐辛子、七味唐辛子、わさび、からし、マスタード……。


114 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:18:35 ID:ITTOow3a
ありとあらゆる調味料、それと大量の小麦粉。あとは水道から出る水。

究極の空腹のせいで一瞬妙案が頭をよぎる。


……これだけは、人としてどうかと思う……だが…!

「空腹には敵わない……!物は試しだ!」


小麦粉に水を混ぜ粘土状にしてそこに調味料を適当にぶち込み、一口食べてみた。




「俺は空腹に屈した…負け犬だぁぁぁぁぁっ!!」

口からぐちょぐちょの小麦粉粘土が飛び出た。
あれ?おかしいな美味しくないのに目からよだれが出てきたよ。


115 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:20:44 ID:ITTOow3a
「エホッ、エバハッ、ペッペッ……食えたもんじゃないな」

それはもう、もの凄くひどい味だった。
なんというかこう、「小麦粉に水を混ぜて、適当に調味料を入れたような味」だ。
とにかく不味い。もしも他人の家でこれを出されたら、
その場でスティンガーをぶっ放さんばかりの怒りが湧き起こるだろう。

しかし転んでもただでは起きないのが俺の根性。

「……ん?この粘土状のものを水で茹でれば、料理が出来るんじゃないか……?」

そういえば前に何かで見たことがある。
小麦粉と塩と水で「すいとん」という団子のようなものが作れると。

「よし、やってみるか」

トイレ修理のミッションは急ぐ必要もない、今は満腹中枢を満足させることが先決だ。


116 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:21:39 ID:ITTOow3a
あれから三十分くらい経ったか。近くにあったストップウォッチを駆使して
簡易すいとんを作ってみた。

小麦粉に塩少々、それに水を少々加えて
丁度いい大きさにちぎる。それをしばらく寝かせる。

一時間くらい寝かせるのがいいと聞いたが、
待ちきれないので二十分でお湯の中へダイブさせた。



「そして、これでいよいよ完成か……!」

茹で上がったすいとんを皿に乗せて、醤油をかけて一口戴く。

「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!!……うままっ!」


117 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:22:39 ID:ITTOow3a
本当はスープに入れて食うものらしいのだが、
スープがあるわけもないのでそのまま食べる。
そのままでも十分に美味しいじゃないか。

やっぱり腹が空いてるときは何でも美味い。

「『泣きっ面に蜂』ならぬ、『空きっ腹に飯』……これは流行る」

そんなことを呟きながらガッガッとすいとんを口に運ぶ。
これは中々腹に溜まる料理だな。実に素晴らしい。


ものの五分ですいとんを完食し、ゲフゥッと一息ついた。


118 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:23:36 ID:ITTOow3a
先ほどは空腹で考えが働かなかったが、今は満腹で眠くて考えが働かない。
いつまでもこうしているわけにもいかないので、
爪楊枝でシーシーやりつつ、これからの行動を予定する。

どうするもこうするも、ここから最短の一階東側トイレに向かうしかないか。


「ハァ、やれやれ、ぼちぼち仕事に戻るか……」

んー、どっこらしょと立ち上がり、コキコキと肩を回した。

「しかし……この大量の小麦粉をここに残すのはもったいないな」

一袋あけてすいとんを作ったものの、まだ結構な量の小麦粉が残っている。
正確には数えていないが、大体二十袋くらいはありそうな感じだ。


119 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:24:45 ID:ITTOow3a

「……くすねて、いやいや、貰っていくか」


なんせ六十四個ものトイレを直すんだ。作業途中にまた腹が減るかもしれない。
小麦粉を持てるだけ持っておいて、腹が減ったらここに調理しにくれば……

「よし、それがいい。そうしよう」

すんなり自分を納得させて、小麦粉の袋を持てるだけ持った。
持てる最大上限は二十個みたいだ。


いつもニキータだのスティンガーだの大型なものを
体のどこにしまってるんだと訊かれるが、それは企業秘密。教えられんな。


120 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:26:24 ID:ITTOow3a
小麦粉を大量ゲットし、空腹も満たした所で食料庫・調理場を後にする。
後でまた来るかもしれないから場所を覚えておいた。

「さて、じゃあ一階東側トイレに向かうか……」


もの凄い乗り気がしないまま、満腹になった腹をさすりながら
うだうだと一階東側の男子トイレへ来てみた。


「あーあ……今回のミッション、引き受けなきゃよかった……
こういうのは雷電がやればいいんだよ雷電が」

  PLLLL♪    PLLLL♪

ぶつくさぼやいているとまた通信が入った。


121 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:27:32 ID:ITTOow3a
[スネーク、一階東側男子トイレへ着いたな]

[あぁ、大佐か]

[修理の方法はわかるかスネーク?]

[昔テレビの特集で見たから、水洗便所の節水方法くらいは知ってるぞ]

[………]

[疑っているのか大佐?……まずペットボトルに水を入れてだな]

[いや、知っている]


122 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:29:40 ID:ITTOow3a
[大佐も毎週見てるのか?『イトゥ・KのShock Tackle!』を]

[スネーク、それはトイレの裏技最低知識だ。しかも修理とはなんら関係ない]

[百も承知だ]

[……そう思って、トイレのスペシャリストを呼んである。
トイレ研究家のラシクアン・レイトー氏だ]

[大佐、トイレ研究家もいいが、俺のボケをトイレの水の如く流すのもどうかと……]

[よろしくスネーク。俺がトイレ研究家のラクシアン・レイトーだ]

こいつら俺のボケをとことん無視する気だ。
もうちょっと心にゆとりがあってもいいんじゃないか?


123 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/02/25(日) 18:31:02 ID:ITTOow3a
[ラクシアン・レイトー、トイレ研究家か。何にでもその道の者がいるもんだな]

[地球上のトイレは全て熟知していると思ってもらってもいい。
トイレ関係で答えられないことはないからな]

[本当か?]

[本当だとも]



[……“ジョニーどこ行くの?”]

[……“ちょっと便所にー”]




[よろしく頼んだ、レイトー!]

[スネーク、君とは解かり合えそうだ!]

[……それでは、あとは二人に頼んだぞ。私はちょっと頭痛薬を飲んで休んでくる]

大佐が弱弱しい声で通信状態から離脱した。やはり歳には勝てないのか?





145 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:42:56 ID:FiHJMNgF
――Mission Log――

必要な武装を調達したスネークは一階東側男子トイレを目指すが、
途中、美味しそうなパンの匂いを嗅ぎつけてしまい
その匂いで腹が減っていたことに気づく。空腹に溺れた
スネークは、パンの匂いを辿って“食料庫・調理場”に辿り付く。
そこでパンを捜索するも、実体が掴めず空腹は抑えられぬままだった。
しかしパンの代わりに小麦粉と調味料を発見し、小麦粉で
“すいとん”を作ることに成功する。見事空腹を満たした。
空腹を満たした後、大量の小麦粉を入手したスネークは
いよいよ一階東側男子トイレに到着する。

大佐の紹介のトイレ研究家“ラクシアン・レイトー”と
すっかり意気投合したスネークは、いよいよミッションに取り掛かる。

【EXIT】


146 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:43:37 ID:FiHJMNgF
トイレの専門家も仲間についたところで、いよいよ本当のミッションに移れる。
思えば長々と全然関係ないことをやってきたものだ。

工具を探したり、ダンボールを発見したり、パンを探したり、すいとんを作ったり……

今までのは全部デモンストレーション的なものに過ぎない。
これからが本当の、便器との一対一の戦いだ。

[よし、それでは便器の修理を開始する]

[じゃあスネーク、まずは便器一つ一つ水を流してみて、故障箇所を点検するんだ]

[了解]

男子トイレ特有の小便専用便器から調べてみることにした。


147 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:44:22 ID:FiHJMNgF
[これは……ボタンを押して流すタイプじゃないな]

[あぁ、自動洗浄小便器だな。その便器の前に立つとセンサーが反応し、
便器から離れると自動的に水が流れる仕組みのやつだ]

[それはもう、トイレというより電気配線の話じゃないのか?]

[ふっ、トイレ研究家を舐めてもらっちゃ困るな。トイレ関係なら
配線だろうが配管だろうが何でも知ってるさ]

[そうなのか。それじゃあまずどうすればいい…… !!]

通信途中、キュピィンと何とも言えぬ嫌な予感がした。


148 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:45:13 ID:FiHJMNgF
その嫌な予感はすぐに的中することになった。

[ぐああっ!]

[!? どうしたんだスネーク!]

思わず腹を押さえてその場にうずくまった。
――キリキリとした痛みが俺を襲う。


[腹が……腹が痛い!便意だ!!]


[べ、便意だって!?]


149 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:45:58 ID:FiHJMNgF
[ぐああ……そういや飯も食ってなかったが、トイレにも行ってなかった……!]

[スネーク!腹ってことは大か!?]

[くそ!便器を直しに来て便器にすがることになるとは!あぁぁ……]

[まずいぞスネーク、今その場の便器はほとんど使えない。なんとか代わりを探せ!]

[あぁ、すまない……だが、今は便意を
抑えるのに専念したい。一旦通信を切らせてもらうぞ]  シュイィィン


「ぐっ……ぐおぉぉぉ!代わりのトイレはないのかああぁぁ!!」

とてつもない便意の波に呑まれる。今日はとんでもない厄日かもしれない。
このまま便意のなすがままにされて脱糞してしまえば、社会的にゲームオーバーだ。


150 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:47:27 ID:FiHJMNgF
「まて……落ち着け、まだ何か策が残されているはずだ……!」

こんなときこそ落ち着いて物事を整理するのが一番だ。
さっきの空腹ピンチも、すいとんの作り方を思い出したことで
なんとか乗り切ったじゃないか。


「……あ!そうか、確か緊急時用仮設トイレというのがあったな!
場所は確か……一階東階段付近、この近くだ!」

あの事務室に行く前、建物内案内図を見たときに
そんな感じのトイレの場所が書いてあったような気がする。

そのトイレも使えないかもしれないが、一か八かだ。
ん?でも緊急時だけしか使っちゃいけないのか?
……少なくとも今俺は緊急時だ。使っても文句は言われないだろう。


151 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:48:09 ID:FiHJMNgF
なるべく肛門に力を入れながら、ひよこのような
ピョコピョコ走りで仮設トイレへ向かう。
……あぁ、今ならジョニー佐々木とわかりあえるような気がする。

それにしても、この状態で敵に遭遇したりしたら間違いなくやられるだろう。
ゲーム的にも社会的にもゲームオーバーだ。

「間に合ってくれ……なんとか間に合ってくれ!」

人間窮地に立たされるととてつもない力が出ることがあるらしい。
火事場のクソ力というやつだ。あ、ヤバい。クソとか思ったら漏れそうになる。

とにかくその火事場の馬鹿力の全てを肛門に費やす。
これで仮設トイレが使えなかったらもう俺は駄目だ。


152 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:49:47 ID:FiHJMNgF
「くっ…はぁっ……あ、あった!フリーダムへの扉!」

必死の思いでなんとか仮設トイレドア前に到着した。
もう腹は限界だ。肛門のダムもそろそろ決壊する。

あせる気持ちを抑え、ドアを蹴破るように開けた。


「ぐっふぅ……クサッ!コノヘヤニオウヨ!!」

アンモニア臭やら大便臭やら、やたらクサい臭いがする。
だが背に腹はかえられない、ここで用を足すほかに方法はない。


153 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:50:31 ID:FiHJMNgF
鼻を摘み、尻を押さえながら個室のドアを開け……愕然とした。

……水が張っていない。

「こ、故障しているのか!?」

  PLLLL♪    PLLLL♪

「うおっ!?」

コール音にビックリして肛門が一瞬緩んだが、なんとか持ちこたえた。

[な、なんだ!]

[スネーク!それは汲み取り式便所と言って日本古来の]

[御託はいい!用件を言えええぇぇ!!]


154 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:51:09 ID:FiHJMNgF
[いやいやすまん、つまり水が張らないタイプの便所だから
故障じゃなくて、そのまま用を足せるということだ]

[なに!本当かレイトー!!]

その言葉を聞いてすぐにスニーキングスーツを脱ぎ、
疾風の如く速度で便器に座った。


「うおおおぉぉ……ああぁ…あああうぉ……」


――俺は精神的に楽園へと飛び立った。
全てから解き放たれた本当の自由とは、ここにある。


155 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:52:04 ID:FiHJMNgF
[なんとか間に合ったか、スネーク]

[あぁ、レイトー……俺のこの様子もモニターされているのか?]

[……残念ながら]

[別にいい……今は自由を楽しみたい……]

[だが、少し臭うだろ?そのタイプの仮設トイレには汲み取り式便所が
多く採用されてるんだ。なんせ穴を掘って上に便器を設置すれば完成だからな。
日本では古くから親しみを込められて『ボットン便所』なんて呼ばれてる]

[少しどころじゃなく、とてつもない臭いがするけどな……鼻が曲がりそうだ]

[そうか?妙だな。仮設とはいえ、臭いをこもらせず外に放出するダクトがあると思うんだがな]

[いや……臭すぎてなんだかめまいが……]

……なんだか、頭がぼーっとする。
目も焦点が合わせられないし、気分がおかしい。クラクラす――


156 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:53:10 ID:FiHJMNgF
――暗い。ここはどこだ?ん?ここは、トイレだったか?
汲み取り式便所?何が?何の話だっけ?俺は何を?

あぁ、そうか。俺はトイレが大好きなのか。何で?いや、何でだ?

便所、便器、便座、愛するトイレ。地の果てまで続くような深い穴。
汲み取り式便所独特のこのクサさが大好きだ。
いや、これはクサさではない。極上の幸福の香りだ。
憎しみや怒りを忘れさせてくれる、全てを包み込んでくれる奈落の穴。

汲み取り式便所は最高だ。汲み取り式便所万歳。

だが憎しみ、怒りがまた込み上げてくる。
水洗式便所からだ。水洗便所が人間の「負」を生み出してる。
水洗式便所が人間の幸福を流し去ってゆく。

憎い。水洗式便所が憎い。壊したい。水洗式便所を壊したい。

ニクイニクイスイセンベンジョニクイスイセンベンジョコワシテヤル


157 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:54:14 ID:FiHJMNgF
――ーク、ス…ク……スネーク!!]

[!? な、なんだ!?]

なんだ今のは、夢か?それとも幻か?
ここは汲み取り式便所、まだ排泄途中だ。

[どうしたスネーク!今、気を失ってなかったか!?]

[あ、あぁいや、なんだかこの臭いで幻覚が見えて……
レイトーの呼びかけでなんとか正気を取り戻した]

[幻覚だって?]

しかし妙な感覚だった。自分の中に新たな人格が
生まれるような感じというのだろうか……まだ頭がクラクラする。


158 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:57:14 ID:FiHJMNgF
[幻覚って、どんな幻覚?]

[いや、なんだか汲み取り式便所が大好きになって
水洗式便所が大嫌いになって、水洗式便所を破壊したい衝動に駆られた]

[……なんだそりゃ?]

[いや、よくわからない。幻覚ともいえるし夢とも言えるような……]


[スネーク!話は聞いていたぞ、すぐにそのトイレから脱出するんだ!]


急に回線割り込みで大佐の声が響いた。


159 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:57:53 ID:FiHJMNgF
[大佐!?何だって?脱出?]

[キャンベル大佐、脱出とはどういうことだ?]

[レイトー博士、そしてスネーク。よく聞くんだ。そのトイレには
『激臭性催眠洗脳薬』がしかけられている可能性がある]

[激臭性催眠洗脳薬?なんだそれは]

[『臭い』によって人に催眠をかける特殊な薬だ。サブリミナル効果というのを
聞いたことがあるだろう?映像で潜在意識に働きかける一種の催眠のようなものだ。
サブリミナル効果が『視覚』ならば、激臭性催眠洗脳薬は『嗅覚』で催眠状態にする]

[臭いで洗脳だと?そんなことが可能なのか?]

[嗅ぐだけで脳に影響する薬など珍しくもない。シンナーだってそうだろう。
激臭性催眠洗脳薬はその名の通り激臭がするためあまり使われないが、
そこは汲み取り式便所だ。便の臭いにまぎれて嗅いでいる可能性がある]


160 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/01(木) 16:58:52 ID:FiHJMNgF
[なんてこった……俺は水洗式便所嫌いに洗脳されるところだったのか!]

[キャンベル大佐、その激臭性催眠洗脳薬を嗅がない方法はないのか?]

[その場から出るしかあるまい。スネーク、君は通信状態で
我々が呼びかけたからその精神を保てたんだ。
普通の人間なら個室には一人で入るし、大便となれば数分はその場に
留まっていなければなるまい。そうすれば数分で洗脳されてしまう]

[なるほど、読めてきたぞ。敵が水洗式便所を破壊したのは、
この汲み取り式便所を使わせ、水洗式便所を嫌わせるためというわけだな]

[洗脳なんて手段を使う敵は何をするかわからん。君も早くそこから脱出しろ!]

[了解!大佐達も引き続き通信状態で待機していてくれ]

水洗式便所嫌いに洗脳し、汲み取り式便所好きに洗脳する。
……全く持ってその意図はわからないが、何か大きな計画が動き出しているような気がする。





170 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:52:14 ID:Gjq2WcG5
――Mission Log――

これまでミッションと関係ないことばかり
やっていたスネークは、いよいよ本格的にミッションに移った。
早速一階東側男子トイレの修理にとりかかろうとするが、
いきなり強烈な便意に襲われる。壊れたトイレで
用を足すわけにも行かず、困り果てたスネークは
近くに“緊急時用仮設トイレ”があったのを思い出す。
急いで仮設トイレに駆け込むものの、そこは異臭漂う
汲み取り式便所だった。しかし腹が限界だったため
そこで用を足し、危機は去ったかに思えた。
だが、そこには匂いで人を催眠状態にする
“激臭性催眠洗脳薬”が仕掛けられていたのだった。

大佐の通信でそのことに気づかされたスネークは、
大きな策略の気配を感じとりつつトイレからの脱出を試みる。

【EXIT】


171 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:53:35 ID:Gjq2WcG5
「ゲホッ、ゲホッ、しかし本当に酷い臭いだ。早く脱出しないと頭をやられる」

スニーキングスーツをしっかり着込み、
個室のドアの鍵を外して外に出た。

……いくら洗脳されないように急いでいるといっても、
手くらいは洗わなければだめだろう。
洗面台の水も出るみたいだし、しっかり石鹸をつけて……

――蛇口をひねって水を出した瞬間、背中に鋭い殺気を感じた。


「クッ!!」

反射的に身を伏せたのは正解だった。
シュワンッ!という空気が斬れるような音がして、洗面台の鏡が真っ二つに割れていた。


172 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:54:16 ID:Gjq2WcG5
伏せた状態からすぐに立ち上がり、体勢を立て直す。
俺の後ろには見たこともない女が立っていた。
作業着のようなものを着込んでいるが、中々の美女だ。

……片手に日本刀さえ持ってなければ口説いていたのに。

「あなたがスネークね……もう話は耳に入ってるわ」

「なんだお前は」

「あなたはどこまで耳に入ってる?個室から駆け出てきた
その慌てぶりだと、臭いで洗脳されるって知ったくらい?」

「………」

日本刀の切っ先をこちらに向けたまま微動だにしない。
向けられた俺も無論微動だにできない。


173 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:55:06 ID:Gjq2WcG5
「……貴様らの目的はなんだ」

「目的?そうね……」

依然女は刀をこっちに向けたままだ。
いつでも身をかわせるように構えているものの、
先ほどの刀の動きを見る限りでは、100%かわせるという自信はない。

「……失われた過去を取り戻すってところかしら?」

女の口元がニヤリ、緩んだ。刀からも女からも殺気が出ている。

「失った過去は取り戻せやしない」

「取り戻せるわよ、もう一度世界を過去に戻すんですもの」

言葉を言い終えると同時に、切っ先がかすかに動いたのが見えた。


174 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:56:41 ID:Gjq2WcG5
首元を狙った突きを紙一重で左に避け、トイレの個室に飛び込む。
突きの風圧だかなんだかで、首筋から一筋血が流れた。

……ヤバイ、これはヤバイ。俺丸腰だ。相手日本刀。

[大佐!聞こえるか、大変だ!敵に出会ってしまった]

[落ち着くんだスネーク!その狭いトイレの中だ。相手の刀使いも早々刀は振り回せまい。
それにいつまでもそこにいると激臭性催眠洗脳薬にやられてしまうぞ]

[ならどうすればいい!]

[隙を見て逃げ出すんだ!]

[くそ!仕方ないがそれに了解するしかあるまい!]

逃げるというのはあまり気が進まないが、
この状況下ではもはやそれしか方法は残されていなかった。


175 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:57:46 ID:Gjq2WcG5
「ああああぁぁぁ!!」

女の雄たけびのような掛け声と共に
俺の入っているトイレの個室がなぎ倒された。
……いくら日本刀とはいえ、なんてパワーだ。

「スネーク、お喋りの時間は終わった?」

「ここは男子便所だ。出て行ってもらおう……いや」

個室を切り倒してくれて好都合。おかげで逃げやすくなった。
女の左が空いている。

「ここは俺が出て行こう!!」

陸上で言えば好タイム確実、野球で言えば盗塁成功確実の
とびっきりのダッシュで出口に向かって走り跳んだ。


176 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:58:20 ID:Gjq2WcG5
しかし「させるか!」と言わんばかりに
高速で日本刀の刃が目の前に立ちはだかった。

「あらら、逃げるの?伝説の傭兵が聞いて呆れるわね」

……ますますまずいことに気が付いた。
激臭性催眠洗脳薬の臭いが充満していているのも十分まずいが、
トイレ自体が狭いということは、その分刀の届く距離も近いということだ。

……隙を見て逃げ出すのは、はっきり言って至難の業だ。

「……よし、わかった。逃げるのは無理そうだな」

「あら?じゃあおとなしくここで首を斬られることに決めたの?」


177 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 15:59:15 ID:Gjq2WcG5
「……その前に、二、三訊きたい事がある」

「冥土の土産ってやつ、ね。いいわよ聞いてあげる」

「赤い配管工の伝説を知っているか?」

「赤い配管工?」

女は言葉に疑問符をつけながらも、刀にはまったく動揺を見せていない。

「そうだ。一説には大工だという話もあるが、その配管工はな、
ただの一人の国民であり、毎日泥にまみれて働いていたそうだ」

「それがどうしたの?」

「ところがその配管工は、その国の王族関係者がさらわれるという
一大事が起こったとき、どういうわけか国の代表となって王族の救出に向かった」

「………」


178 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 16:00:18 ID:Gjq2WcG5
「たった一人の配管工は国の命運を背負い、単身で軍勢に立ち向かった。
無謀とも思われたその挑戦だったが、見事に王族関係者を救い出すことに成功した。
それから彼は英雄と呼ばれ、今もどこかに生きているそうだ」

「……だから、なんなの?」

今度は俺がニヤリと笑い、女に言い放った。

「英雄というのは、いかなる絶体絶命な状況下でも英雄になれるということ。
訊きたい事は……お前は配管工は嫌いか?ってことだ」

「長い前置きして、そんなのが訊きたかったの?ふーん、まぁ、嫌いね。
とくに水洗式便所を直したりする配管工は大嫌い」

「……そうか。じゃあ、それともう一つ訊きたいことがある」

「ハァー……今度はなに?」

深い溜息をつかれ、刀を首元に近づけられた。


「お前の名前はなんだ?」


――ほんの一瞬、ピクリと刀に迷いが出た。


179 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 16:01:05 ID:Gjq2WcG5
その一瞬の迷いをつき、体をしゃがませる。
神速で刀がコンマ数秒前に俺がいた場所を通過する。
刀は斬るべき俺を斬らず、またも個室を斬り裂いた。

「はぁ……はぁ……!」

完全に刀に女の迷いが映っている。恐らく動揺で周りが見えていない。

「名前を聞かれるのは嫌いか?」

「……私が……私が女だってだけで……!」

刀を持っていない左手で顔を押さえ、凄い形相でどこか心の闇を見ている。

「先に生まれても“ベン”の名は貰えず……女に生まれたせいで!!」

さっきまでのクールな顔つきから鬼の形相に変わった女が、
床を蹴り壁を斬りつけながらこちらへ突進してきた。


180 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 16:01:49 ID:Gjq2WcG5
「うわあああああぁぁぁぁぁ!!」

無数の斬撃が俺めがけて飛んでくる。

第一撃の横斬りを屈んで避け、第二撃の縦斬りを横に跳んで避ける。
第三撃の斜め斬りを間一髪、後ろに撥ねて避けた。

錯乱して刀を振り回しているとはいえ、流石の鋭い斬りつけだ。

「はぁ……はぁ……あぁ、ふぅ……!!」

息と髪を乱した女は、一度髪を掻き上げて一息ついた。

「いいわ……教えてあげる。私の名前を!」

ある程度落ち着いたのか、まだ錯乱しているのか。
鋭い目つきで睨み、刀を構えた状態で止まった。


181 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/04(日) 16:02:38 ID:Gjq2WcG5
「私の名前は“クミ・ジョー”!世界を過去に還すジョー・ファミリーの一員よ!!」

自己紹介と共にスペインの闘牛の如く突進してきた。
さっきよりもまた早い速度で刀が振り下ろされて来――

――ガッキィィン、と金属音がトイレ内に響いた。


「!! ばっ、バカなっ!」

「……さっき配管工は嫌いだと言ってたな」

「私の剣術をそんなもので……!?」


「さぁ、やっと敵の正体も見えてきたところだ」

『工具セットに入っていたモンキーレンチ二本』で刀を止めた俺は、
久々の戦闘に闘志を燃やし、力を込めて勢いよく刀をはじき返した。


「――ショウタイムだ!」





193 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:04:10 ID:CufcbEg/
――Mission Log――

トイレに仕掛けられた激臭性催眠洗脳薬から逃げるため
個室を飛び出したスネークは、手を洗おうとしていたところを
背後から何者かに斬りつけられる。間一髪、身をかわした
スネークが後ろを振り向くと、そこには日本刀を持った女がいた。
日本刀の女は今回の事件の首謀者の手下らしく、
世界を過去に還すジョー・ファミリーの一員、“クミ・ジョー”と名乗る。
興奮したクミの斬撃をことごとく避け続けたスネークは
なんとか隙を見てトイレから脱出を試みるも、脱出は困難と判断した。

逃げることを困難と見たスネークは、
日本刀相手にモンキーレンチ二本で戦うことを決意する。

【EXIT】


194 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:05:12 ID:CufcbEg/
モンキーレンチ二本を構え、刀に全注意力を注ぐ。
刀に工具で対抗するだなんてバカだと思われるかもしれないが、
これでも結構大真面目だ。刃物に対抗できるような硬いものが工具ぐらいしかなかった。

「面白い、そんな工具で私の日本刀と殺り合おうっていうの!?
この刀は私の魂、私の魂はそんな工具に負けやしない!」


さっき名前を聞いたときよりは落ち着いているものの、
やはり若干興奮しながら攻撃を仕掛けてきた。

狭いトイレの中でも縦横無尽に繰り出される斬撃だが、
気分が高揚してがむしゃらに振られる攻撃なんて防ぐのはたやすい。


「えぇい!ちょこまかと動き回って……!」

「……クミ・ジョーと言ったか。名前からしてハーフか?」

がむしゃらに刀を振っていたクミは、
戦闘している間に落ち着きを取り戻していったようだった。


195 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:06:25 ID:CufcbEg/
「……そうよ。日本人とアメリカ人のハーフ。
私の母親が日本人なのよ。私にこの日本刀と剣術を授けてくれたわ」

「実の娘に日本刀を持たせるとは、随分な両親だな」

「フフッ、私はこれでもジョー・ファミリーの一員。世界を作り変える能力があるのよ」

すっかり落ち着きを取り戻したのか、一息ついて切っ先を俺に向けた。

「そう、あんたみたいな『男』に負けてちゃ、父親にも認めてもらえないのよ」

切っ先が目の前からゆっくり引いていき、クミが刀を持ち直した。
……あれは、日本の剣道でいうところの『面』の構えだろうか。

「スネーク、私はいつでも相手に致命傷を与えられるように、
急所だけを狙って斬りつけているのよ」

「……あぁ、さっきから何度も防いでいればわかる」


196 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:07:11 ID:CufcbEg/
「だから……一撃当てられれば私の勝ち。あなたは死ぬわ」

クミの足が踏み込みの形になる。一気に攻めてくる気だ。

「これで終わりよ!スネエエェェク!!」

目にもとまらぬ速さで一気に踏み込んでくる。
一瞬で間合いを詰められ、真正面から頭めがけて
刀が振り下ろされてくるのがわかった。
慌ててモンキーレンチで防御をするが、刀の勢いは止まらず――


――ジャギギギ、と鉄が斬れる音がした。



197 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:07:55 ID:CufcbEg/
「………」

「………」

戦闘の終わりを告げる、沈黙。


「……チェックメイトだ」


右手のモンキーレンチを縦にして防御していた俺は、
レンチを縦に裂け斬られながらも手まであと数ミリというところで刃を止めていた。

クミの唖然とした顔をチラッと確認し、左手のモンキーレンチをしっかり握りなおした。

「うおああぁっ!!」

右手のレンチに静止した刀めがけ、
左手のモンキーレンチに持てる限りの力を込めて殴り叩いた。


キィン、という音をたてて刀は折れ、クミもその場に崩れ落ちた。


198 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:08:54 ID:CufcbEg/
「……そんな、バカな……私の魂、私の剣術がレンチなんかに……」

とどめを刺そうかと思ったが、
もはや戦意を失っているようだしやめておこう。

「……フフ、フフフフフ。私じゃ世界返還の力になれないってことかしらね」

膝をついたまま、顔を上げようとしないクミに俺は問いかけた。

「教えてもらおうか、今回の計画の全貌を」

そう、どうにも計画の目的がわからない。
わざわざこの建物内の水洗式便所を破壊し、
職員にこの仮設トイレの汲み取り式便所を使わせることで
「水洗式便所嫌悪・汲み取り式便所信仰派」に洗脳させる。

それをして、一体何のメリットがあるというのだろうか。
世界を過去に戻すということと、汲み取り式便所に何の関係があるんだ?

クミが顔を上げてニヤリと笑う。

「計画の全貌?……フッ、そんなの教えるわけないでしょ」

「……お前達のボスは誰だ」

このイカレた計画を計画したのもどこのどいつだかわからない。
何から何まで全く見当がつかない。


199 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:09:36 ID:CufcbEg/
「……言ったはずよ?私は世界を過去に返すジョー・ファミリーの一員だって」

「それがなんだ」

壁を背もたれにして座ったクミが呆れたように言い放った。

「ファミリーの長って言えば……言わずもがな、あなたにもわかるでしょ」

「……!! まさか、ファミリーってのは本当に家族……!?」

……てっきりマフィア一家とかそういう意味の「ファミリー」だと
思い込んでいたが、血の繋がった本当のファミリーなのか。

「その通り。私の父親がこの計画の発案者よ」

……なんというか、声が出ない。


200 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:10:54 ID:CufcbEg/
「それよりも、こんなところでじっとしてていいのかしら?」

……あぁ、そうだった。この部屋には激臭性催眠洗脳薬が
充満してるんだった。長くいると洗脳されてしまう。

「……今すぐにでも、建物内の私達の部下があなたを殺しに来るわ」

クミが胸のポケットから煙草を取り出して吸い始めた。この臭いの中で
よく吸える気になるもんだ。……まて、建物内の部下?

「部下だと?この建物内には数名の職員しか残っていないはずだ」

「……本当にバカね。なんのために汲み取り式便所信者を増やしたと思ってるの?
普段この建物内で働いている職員は大半が避難している。
そこにわざわざ残っている職員がいるってことは、何らかの理由があると思わない?」

「………」


201 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 17:13:07 ID:CufcbEg/
「……その顔はまだわかっていない顔ね。職員達は危険かもしれないっていうのに、
なぜこの建物内に残っているのか。それは……既に私達の催眠洗脳にかかっていて、
自ら『この建物内に残りたい』と志願したのよ。それはもちろん計画の邪魔をする者を
始末するように考えているからだけどね」

……建物内の職員達は、既に洗脳されたジョー・ファミリーの部下?

「!? なんだと!?」

「あなたはここに来るまで何人かの職員に会ってるだろうけど、
みんな人が良さそうだったでしょ?でもそれは仮の姿。
本当は洗脳されていて、あなたを殺したくてうずうずしてたはずよ」

「嘘だ!あの優しさが偽りだっただと!?……信じられない!」

フラッシュバックされて、これまでの職員達の顔が浮かんでくる。
どれもとても偽りとは思えない笑顔ばかりだった。

その時、ピンポンパンポーンと館内放送の音が聞こえた。


〔汲み取り式便所を愛する諸君に告ぐ。ソリッド・スネークが
我々の計画の邪魔をするそうだ。見つけ次第殺せ。どんな手を使っても構わん、殺すんだ〕


「さぁ……あなたもこれで終わりね、ソリッド・スネーク」





209 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/09(金) 21:40:41 ID:CufcbEg/
     −=≡ちょっとここで確認のコーナー≡=−

【スネークの現在の持ち物】

・いつものスニーキングスーツ
・物置部屋の鍵
・工具セット┬モンキーレンチ二本(うち一本はクミとの戦闘で破損)
       └大量のスパナ(およそ25本くらい)
・ダンボール
・小麦粉×20袋

【登場人物】

〜スネークと愉快な仲間達〜

ソリッド・スネーク・・・・・・・・・・・・・・・伝説の傭兵。ダンボール大好き。
ロイ・キャンベル大佐・・・・・・・・・・・・頼れる指令。でも時々頼れない。
オタコン (ハル・エメリッヒ)・・・・・・・アニメオタク。そして天才ハッカー。
ラクシアン・レイトー ・・・・・・・・・・・・・トイレ研究家。トイレのことなら何でも知ってる。

〜世界を過去に還すジョー・ファミリー〜

クミ・ジョー (久美・ジョー)・・・・・・日本刀操る女剣士。日本人と米国人のハーフ。
??・ジョー・・・・・・・・・・・・・・・・・・今回の事件の首謀者。ジョー一家の大黒柱。汲み取り式便所をこよなく愛する。

潜入先の会館――【シショケーツーホール】
様々な人種が働く世界的に有名な会館。元は古くなって使われなくなった
市民会館だったものを政治家の御手洗丹剛が買い取って改修工事をし、現在に至る。

御手洗丹剛は今回のミッションの依頼人。大佐と旧知の間柄。
休日によく一緒に買い物とか行ったりする。


現状の設定は大体こんな感じ。一回整理しないと自分がわからなくなりそうだったんで。





214 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:20:48 ID:882ld1Ul
――Mission Log――

日本刀の使い手クミ・ジョーをモンキーレンチで倒した
スネークは、クミの話により今回の件が“ジョー・ファミリー”の
長である“父親”の一存で計画されたことを知る。
その際、既に激臭性催眠洗脳薬で洗脳されている職員達が
館内をうろついていることもクミから知らされた。

館内放送で「スネークを抹殺せよ」という命令が職員達に下り、
スネークは敵地で孤立無援の状態となってしまう。

【EXIT】


215 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:21:34 ID:882ld1Ul
「くっ……!くそおっ!!」

急いで仮設トイレから駆け出て周りを確認した。
幸いにも人の姿は見えない。今のうちに大佐に連絡をしておこう。

  PLLLL♪    PLLLL♪

[大佐、聞いていたか!?]

[スネーク、やっかいなことになったな。今その建物内には全職員の一部とはいえ、
百数名の職員が残っているんだ。しかもそれが全員洗脳されているときている]

[あぁ、いつもの『俺以外全員敵』って状態だ]

[だがスネーク、間違っても洗脳された彼らを殺すんじゃないぞ。
洗脳さえ解ければ一般の人間だ。悪党でもなんでもない]

[では、どうすればいい]

[決して一人も殺さず、なるべく見つからないように黒幕のところへ行くしかあるまい]

[一人も殺さず、か……随分難しいことを言ってくれるな]


216 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:22:25 ID:882ld1Ul
[君のミッション内容も変更だな。『汲み取り式便所世界返還計画』の全貌を暴き、
それを阻止することだ。……君ならきっとできる、検討を祈るぞ]

[スネーク!俺も応援してるからな!とりあえずがんばれよ!]

[……大佐……レイトー……了解だ!出来る限りのことを尽くす!]  シュイィィン

全く……こんなハードミッションになるなんて考えてもみなかった。
敵に見つからず、ボスの居場所を見つけ出し、計画を阻止。
……スニーキングミッションらしくなってきた。

自分の頬をパァンと叩いて、気合を入れなおした。

「よし!やってやる!必ずミッションクリアしてやる!!」



「いたぞ!!スネークだ!!」

見つかった。


217 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:23:15 ID:882ld1Ul
「スネエェェク!!待て!我々の計画の邪魔はさせないぞ!!」

「うおおぉぉ!待てといわれて待つわけにはいかん!」

気合を入れなおすにしても、大声なんて出さなければよかった……
二人組の男に追われているが、幸いにも鈍足の肥満体型だ。逃げ切れる。

ある程度距離を離して曲がり角を曲がり、立ち止まった。

「あっ、くそっ、まて……はぁはぁ」

「スネー、スネ、ク、はぁはぁ」

息を切らしながら二人が曲がってきた。
隙有りといわんばかりにいつものパンチパンチキックを食らわす。

「ふっ、はっ、ほぁっ!」

「ぐわわぁっ!!」

……いつも思うんだが、パンチやキックで気絶するってのは結構体弱いよな。


218 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:24:13 ID:882ld1Ul
洗脳された職員達は殺すなと言われて、気付かれて追われてしまったのだから
気絶させることはやむを得ないだろう。気絶した二人を目立たないところに
隠そうと思ったが、重いし隠せそうなところもないのでやめた。

「さて……ここからは慎重に動こう」

普通の会館なので落とし穴などの罠はないだろうが、
職員達がうろうろしているのでうかつには動けない。

それにクミ・ジョーが言うには「ジョー・ファミリー」とのこと。
まだ第二、第三の「ジョー」が潜伏しているかもしれない。

「問題は、どうやってボスの居場所を調べるかだな」

少々危険だが職員を捕まえて聞き出すか、
それとも地道に部屋を調べ上げるか。

「そうだ!事務室に行って聞いてみよう!」と一瞬思ったが、
今館内にいる職員は全員洗脳されているということは
あの人の良さそうな老人も洗脳されているということだろう。

……あの老人の話は嘘なのか?
心の中では俺を敵視していたのか?

人間が信じられなくなりそうなので、これ以上考えるのはやめた。


219 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:25:17 ID:882ld1Ul
このままここにいても、そのうち見つかるのが関の山だ。
なんとか監視の目をかいくぐって移動しよう。

……監視?

「ちょっと待て、この建物内には監視カメラとかあるのか……?」

確か大佐は最初のほうで「数あるセキュリティーをものともせず」とか言ってたよな。
ってことはだ。この建物には厳重なセキュリティーシステムが……

忍び足で歩いて曲がり角に近付き、角から通路の様子をうかがった。

「……なんてこった、監視カメラがしっかり設置されてやがる」

これでは迂闊に動けない。本当に迂闊に動けない。
チャフグレネードもなければ銃もないから、監視カメラの破壊は無理だ。


220 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:26:16 ID:882ld1Ul
「……仕方がない、仕方がないよな。これしか方法ないよな」

よっせ、よっせと体を屈伸させ、ふぅ、と一息つく。
そして両手を地面につき、片膝も地面につける。その体勢のまま頭は下げておく。

「うし、やるぞ。よーい……」

顔を進行方向に向けた。

「……ドン!!」

――世界記録を塗り替えるつもりでの全力疾走。
走った。とにかく走った。監視カメラに発見、視姦されようとも走った。
強行突破しか方法がなかったんだ。

そのとき「フィーユン、フィーユン」といかにも緊急事態っぽい音が鳴り響く。

〔スネークは一階東側通路を階段に向かって疾走中。繰り返す、一階東側通路を……〕

現在位置を全職員に向けて報告するなんて、こんなん聞いてないぞ。


221 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:26:58 ID:882ld1Ul
ここで流石に俺はあせった。

「どっか、どっか隠れるところだ!隠れるところがどこかに……!!」

しかしここは廊下の途中。隠れるところなんてどこにもない。
普段ならあんなに頼もしいロッカーもない。

あたふたおろおろしているうちに、どこからともなくザワザワと団体の声が聞こえてくる。
きっと洗脳された職員の奴らが俺を探しに来たのだろう。


「一か八かだ!……なんか今回のミッション一か八かの賭けが多いような気がするな」


……数分後、数名の職員達が俺の近くへ寄ってきた。

「オイそっちにいたか?」

「いや、全然みつからん」

「おかしいな、一階東側通路といったらこの辺なのに」


222 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:27:59 ID:882ld1Ul
息を殺して職員達の様子をうかがう。

「もしかしたら、もうどこか別の場所へ行ったのかもしれない」

「あぁ、伝説の傭兵だからな……監視カメラを掻い潜って移動するのも容易いかも」

「よし、じゃあ二階を探しに行くぞ!!」


――よかった、セーフだ。とりあえず危機は去った。

俺はその場で、賭けともいえる手段だったが、
「ダンボールに隠れてやり過ごす」方法を思いついたのだった。

しかし、ダンボールに「危険物注意!」って書かれてるからとはいえ、
何もない廊下にダンボールが落ちてたら普通怪しいと思わないか?

……ダンボール、あの時あの場所で取っておいてよかった。


223 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:28:44 ID:882ld1Ul
ダンボールを再度折りたたんで懐にしまいこみ、
周りを注意深く確認しながら進んでゆく。

とりあえずは一階をうろついて使えそうな情報を探してみることにした。

……しかし、あのクミという女と戦ったときに一撃も喰らわなかったのは奇跡だな。
この会館の中には回復アイテムだなんて無いだろうし、
傷を負ったらどう治療しよう。止血くらいならできるか?

「ん……物置部屋……か」

当てもなく徘徊していたらいつの間にか物置部屋に戻ってきていた。
ダンボールや工具セットやら、色んなものを手に入れた所だ。

中に入って隠れようと思ったが、扉の鍵とは別に南京錠で鍵がかかっている。そりゃそうか。


224 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:29:46 ID:882ld1Ul
「仕方がない、階段で上に上るとするか……」

ふぅ、と溜息をついて先ほど通りかかった階段に戻ろうとしたときだった。


「いたぞ!スネークだ!!」

曲がり角を曲がってきた職員に見つかった。

「くっそぉっ!ソリトンレーダーさえあれば!!」

何を隠そう今回の潜入にはソリトンレーダーが使用されてない。
なので肉眼で確認できない敵は本当に確認のしようがないのだ。
だから子供の鬼ごっこのようなもの。

ただし鬼は百数人、追われるほうは一人。
しかも見つかって捕まれば死が待っているという過酷な鬼ごっこだ。


225 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:31:06 ID:882ld1Ul
「まてぇスネーク!!おとなしく捕まれえぇぇ!!」

後ろで喚き散らしながら追いかけてくる職員は、
先ほどの肥満体型とは違って足が中々速い。学生時代に陸上でもやってたのか?

俺はとりあえず逃げながら二階へ進む階段を目指し、疾走する。
二階にさえ進めば、進展という名の新しい道が開けるかもしれない。

後ろを振り向き確認しながら、ついに階段にたどり着いた。

「よし……!早速二階へ!!」

階段の上を確認すると、運悪く職員の団体の姿が見えた。

「あっ!スネークだ!ひっ捕らえろ!!」

慌てて後ろを確認するも、後ろからは陸上系職員。
上の階からは五、六人の職員がやってくる。


226 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/11(日) 18:33:05 ID:882ld1Ul
「チッ!上もダメで後ろもダメなら……!」

大変不本意だが、ここは下の階に降りるしかない。

「職員以外立ち入り禁止」と書かれたガードを乗り越えて
階段を急いで駆け降りるが、正直な話階段ってのは駆け上がるより駆け降りるほうが怖い。
なんか、転んだらもうそのまま転げ落ちてイタタな感じになりそうだからだ。

途中で一段踏み外しそうになりながらも無事に階段を駆け降りると、
三手に分かれる通路があった。とりあえず左に曲がって再び走る。

「はぁ…はぁ…!今日は走ってばかりだな!」

後ろを振り返るとまだ追ってきている。今度は中々しつこい。

  PLLLL♪    PLLLL♪

「なんだぁ!?こんなときにもコールか!?」

こっちがこんなにピンチなのにコールしてくるということは、
それだけ大変な事なんだろう。無視するわけにもいかない。
かなり大変だが走りながら応答することにする。

[こちらスネーク!なんだ!?急いで用件を済ませてくれ!]





237 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:17:40 ID:Ra6fREq+
――Mission Log――

仮設トイレから脱出したスネークは大佐に連絡を入れ
指示を仰ぎ、“汲み取り式便所世界返還計画”の全貌を暴く
ことを命じられた。洗脳された職員達に見つからぬよう
隠れながら進むが、監視カメラに見つかってしまうという
アクシデントが発生。たちまち職員達が駆けつけてきたが、
ダンボールに隠れてなんとかやり過ごしたのだった。
そこで一階にいてはらちがあかないと思い、二階へ続く階段へ
向かうスネークだったが、途中で職員に見つかってしまい、全力で階段へと走った。

しかし二階へ続く階段に職員がいたため、仕方なく
地下へ続く階段を駆け降りたスネークに無線のコール音が鳴った。

【EXIT】


238 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:18:40 ID:Ra6fREq+
[スネーク!たたた大変だ!おち、おち落ち着いてよく聞いてくれ!]

[なんだオタコンか!早くしてくれ!あとお前が落ち着け!]

大佐かと思えばやけにテンパっているオタコンだった。

通信しながら後ろを振り返ると、なにやら追っ手が増えている。
どこで増援したんだ。こっちはもういっぱいいっぱいなのに、
むこうはそういう意味でいっぱいいっぱいか。

[あの、あのね!スネークが全然コールしてこなくて暇で暇だったから、
君が物置部屋で見つけた便器の設計図の暗号を解読してたんだ]

[あぁ、そういやあったなそんなの。そういえばお前に通信したのもあの物置部屋が最後だった]

[そしたらそしたら、この便器の設計図は、なんとななんと便器の設計図じゃなかったんだよ!]

[なに?どういうことだ?]


239 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:19:34 ID:Ra6fREq+
[じゃあ問題!なんだと思う!?これ!]

[知るか!問題形式にしてる暇があったらさっさと言え!!]

[いいかい!?聞いて驚くなよ!?これはなんと……!]

イライラしながらまた後ろを振り向き、凄い勢いの職員達がいることを確認。
そろそろ胃がおかしくなってきそうだ。



[――“新型メタルギア”の設計図だったんだ!!]



七十パーセントほど追っ手たちに気が行ってたのが、
メタルギアという言葉によって一気に通信に気が引き戻された。


240 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:20:30 ID:Ra6fREq+
[な、なんだと!?メタルギアの設計図!?]

[そう!だけど正確にはメタルギアの新型ボディの設計図と言うべきかな?]

[オタコン!詳しく教えてくれ!]

[うん!あっ!で、でもスネーク!後ろ!!]

オタコンの言葉で後ろを振り向くと、数人の職員達が今まさに俺に飛び掛ってきているところだった。


「ぐおおっ!!」

たちまち俺は押さえつけられ、上から上から他の職員達がのしかかってくる。
とんでもない圧迫感に襲われながら必死にもがくも、どんどん圧縮されていく。
このままじゃzip形式にされかねない。

「うおおおぉぉ!俺はこんなところで倒れるわけにはいかない!!」

のしかかってきた職員達を蹴りだの拳だので弾き飛ばし、やっとの思いで立ち上がる。
洗脳されていようが、ただの一般人だ。ゲノム兵ほど強いわけじゃない。


241 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:21:41 ID:Ra6fREq+
弾き飛ばした職員達は立ち上がり、恨めしそうな顔でこっちを見てくる。
じりじりと間合いをつめてくる職員達を相手に、俺はファイティングポーズをとる。

「……まとめてかかってこい」

俺の言葉を受け、職員達は無言で互いの顔を確認し始めた。
誰もが顔を見合わせ、黙ったままうん、うんとうなずいている。

[ど、どうするつもりなんだいスネーク]

[……相手は生身の人間だ。策はある]

[策って一体……?]


アイコンタクトで了承を取ったのか、
職員達はタイミングを合わせてブワッと飛び掛ってきた。


「ハンマーを振り回して殴り倒す!!」

[ス、スネェェェェク!?]


242 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:22:47 ID:Ra6fREq+
かかってくる職員達を、金槌で殴って殴って殴り飛ばした。
「ちぎっては投げちぎっては投げ」という表現はこういう場で使われるんだろう。

もちろん殴られたほうはひとたまりもない。殴られたそばから気絶していっている。


「うらあぁぁっ!!」

ゴッ、と重い音がして最後の一人も倒れ、上がった息を落ち着かせるために立ち尽くした。

[ス、スネーク!当たり所が悪かったら死んじゃうよ!?]

[あぁ、大丈夫だ。死なない程度に力を抑えて殴っておいた]

[ほ、ホントかな……力いっぱい殴ってたように見えたけど……]

[仕方ないだろう、不測の事態だ。この暴力はやむを得ない]


243 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:23:36 ID:Ra6fREq+
落ち着いて周りを見渡してみると、地下ということもあり静かな場所だ。
足音を立てて移動したら、すぐにばれてしまいそうな感じでもある。

「職員以外立ち入り禁止」というガードを飛び越えて
階段を降りて来たんだから、ここは職員達が何かする部屋が集まってるのだろう。

[あぁそうだスネーク、それで新型メタルギアの話なんだけど……]

[そうだったな。便器の設計図にしか見えなかったのに、それの何がメタルギアなんだ?]

[それが、設計図を見つけたときは洋式便所の設計図にしか見えなかっただろ?
ところが暗号を解析してみてビックリ、洋式便器型のメタルギアのボディだったんだよ!]

[……便器型メタルギアだと?そんなアホな話があるか。信じられんな]

[本当さ!まだ一部しか解読できてないけど、設計図のタイトルには
“METAL GEAR NEW BODY”って書いてあるんだ]


244 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:24:21 ID:Ra6fREq+
しかし何度聞いても、あまり信じられない。
便器型のメタルギアだと?誰がそんなものを……


いや待て。心当たりならあるじゃないか。便器で世界を揺るがすことを目的としている奴らが。


[オタコン!そのメタルギアはジョー・ファミリーが設計しているのかもしれないぞ!!]

[な……ジョー・ファミリー!?……だ、誰?]

[なんだお前、全然こっちの展開を見てなかったのか]

[ご、ごめん。すっかり暗号解くのに夢中になっちゃってて……]

[……まぁ、いい。よし、大佐!レイトー!聞こえているな!?]

回線を作戦本部の大佐、レイトーとも接続する。


245 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:25:14 ID:Ra6fREq+
[……スネーク、エメリッヒ博士……話は聞いていたが、信じられんな]

[スネーク、メタルギアってのは一体なんなんだ?ただことじゃないみたいだが]

[レイトー、詳しいことは大佐に聞いてくれ。それと、大佐とレイトーとオタコンに
頼みたいことがある。三人で力を合わせてその設計図の暗号の解読してくれないか]

[うん、オッケースネーク。じゃあ作戦本部に設計図のキャプチャ画像を送るよ]

[うーむ……よし、スネーク。私達は暗号の解読を急ぐ。君は引き続き任務を続行してくれ]

[おいスネーク……俺になにかできることがあるのか?]

[レイトー、トイレのことなら何でもわかるんだろ?トイレの専門用語が出てきたらどうする?]

[……なるほど。よし、じゃあ俺も頑張って解読とやらをしてやるよ!]

ようやく敵の思惑が見えてきた。メタルギア絡みとなれば、確かに世界を動かしかねない。


246 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:26:09 ID:Ra6fREq+
[それじゃ大佐、俺は任務へ戻る]

[あぁ、検討を祈る]

[スネーク!暗号は僕らに任せてね!]

[トイレとあらばすぐに解決してみせるぜ!]  シュイィィン

さて……新型メタルギアの設計図解読は大佐達に任せ、
俺はボスの居場所を突き止め、計画の全てを吐いてもらわねば。


「だが……どう動けば良いのか検討もつかん」

敵に追われた勢いで地下一階に来てみたものの、本来俺は二階に行くつもりだった。
……「ここは何かの縁」とこのまま地下一階を調査するか、
それとも一階に戻って調査をするか、二階へのぼるか。

「……うん、よし。決めた。このまま地下を調査するとしよう」

決して面倒くさいからとかそんな理由じゃない。本当だ。


247 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:27:19 ID:Ra6fREq+
「しかし……地下一階を調査するにしても、どこから行けばいいのか」

また監視カメラがあるかもしれないので慎重に周囲を調査する。
幸いなことに監視カメラらしきものは見当たらない。
一階よりは動きやすいから、大分ましだろう。

鍵が掛かっているドアはある程度のものであれば
ドアノブを工具セットで壊せばこじ開けられるし、
自動ドアみたいなドアも叩き壊せば壊せないこともない。

力任せで荒っぽいやりかただが、他にいい方法があるわけでもない。
ガンガン突き進みながら、見つからないように行動すればオッケーだ。


「よし、じゃあ手始めにこのドアをぶち破るか」

ドアには「第一資料室」と書かれている。
資料を調べれば、何かこの建物のことがわかるかもしれないしな。
もしかしたらどこかに隠し部屋があったりするかもしれない。


248 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:28:02 ID:Ra6fREq+
「……一般のドアノブだ。ドライバーで開けれるか?」

工具セットの中からプラスドライバーを探し出す。
つくづく良い工具セットだ。日曜大工のお父さんなんかにもってこいだな。

一番大きいプラスドライバーを取り出してネジに宛がってみるが、少し大きすぎた。
続いて一回り小さいもの。やっぱり合わない。三番目に大きいやつは……ピッタリだ。

「よし、大きさはバッチリだな……緩めるときって時計回りだっけ?反時計回りだっけ?」

試しに時計回りに回してみるが、ビクともしない。やっぱり反時計回りだったか。

「よしよしよしよし、順調に落ちついて回せ俺、
ネジの頭がバカになったらそれまでだからな……よしよし」

無事ネジを最後まで緩ませ、二本目のネジの取り外しにかかる。

「一本外せばもうこっちのもんだ、ネジなんぞ敵じゃあない」

それでもゆっくりゆっくり慎重に、プラスドライバーの先端に全神経を注ぐ。
……あと四回転で外れる。三回転、二回転、一回転……

「……オッケェイ!!ミッションコンプリートだ!」


249 名前:MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg 投稿日:2007/03/14(水) 17:29:55 ID:Ra6fREq+
完全にネジが外れたことで思わずガッツポーズをとる。
何事にも全力で挑む、それがマイクオリティーなのだよ。

「あいや、おめでとうねスネーク」

「いやいや、たかがネジ、されどネジですよ」

いつの間にか隣にいた青年と握手を交わす。
へいセンキューセンキュー、俺はやれば出来る男だ。


「……貴様誰だ!!」

「伝説の傭兵とも呼ばれる男が、隙だらけ過ぎて逆に笑えてくるね」


見たことない男が俺を指差しつつ片腹押さえ、
ゲラゲラと笑っている。心の底から誰だお前は。



文章製作:<MGS BEN THE OF TOILET ◆g9o0the/Pg>氏
ロゴ製作:<x70d1vD3>氏